白い器 【2012年 5月11日のFacebookより】
先日も書きましたが、僕が柱としている器は白い器です。
何故白かと言うと、料理を盛った時一番映えると思うからです
白い器の技法は様々ですが、僕はその中で「粉引」という技法を使っています。
何故、粉引なのか?
それは、磁器にはない温かみがあるからです。
粉引は人類が白い器を作りたいという憧れの中から生まれました。
焼き物の原料の多くは、一般に知られた粘土です。
しかしこの粘土、普通に焼いたら決して白くはなりません。
なぜなら、粘土には鉄分などの様々な不純物が含まれており、それらが窯のなかで化学反応をおこして、赤などの「色」になってしまうからです。
ま、それが世にいう土物の魅力ではあるのですが。
それでも先人達は何とか白い器を作ろうとしました。
そしてとうとう中国で白い器、磁器の開発に成功しました。
実はこの磁器、原料は粘土ではありません。
簡単にいうと陶石という白い石なのです。
この石を細かく砕き、水で練って粘土状にしたのが原料になります。
一般に陶器を土もの、磁器を石ものという所以です。
陶石は窯の中でガラス状になります。
ですから、丈夫でシミの付かない真っ白な器が焼きあがるのです。
さあ、世界中の人が、中国の作るその白くて美しい磁器に憧れ、こぞって輸入しました。
そしてなんとか自国でこの磁器を作ることができないか?と思うようになりました。
しかし、どうやって作れば良いか皆目わかりません。
当然です、当時の磁器の技法は最先端の技術。中国だけが持っていた秘中の秘だったのですから。
作りたいっ!、でも出来ない、その思いが各地で磁器に似せた白い器作りになっていきます。
粘土に白釉を掛けたヨーロッパのマジョリカやデルフト陶器。
日本の志野も白い器を作りたいという思いが生み出しました。
そして粘土で作った素地に白い泥を掛けて器を白くみせる粉引も、白い器への憧れから生まれたものです。
時が経ち、磁器の技法も世界中に知られる事になります。
ですが磁器への憧から生まれた白い陶器達は、思いがけず磁器にはない味わいを持ち、今日まで愛される器となりました
一見不完全な白とも取れますが、それが却って僕の目指す器として合っているのでしょう。
ですから僕は、粉引の器を作り続けているのです。
画像の器は、見本の整理で出てきたもの。
一回こっきり作っただけの物だったので、何だかとても懐かしかったです。
2012年5月11日 Facebookより
(現在の主人からの感想)
白い焼き物の歴史のくだりには
少々、正確さに欠けるところもあるかも知れません
ですが、世界が如何に白い器に憧れ
その為にどれだけの時間を費やし
どれ程の努力をしてきたのか
その「 熱量 」のようなものをお伝え出来たらと
そんな想いで、この文章を書いたように思います
今の時代は有難い事に
正確な史実は、多くの方がネットにあげてらっしゃると思いますので
興味のある方は、是非そちらで調べて頂くとして
僕が大切にしている事は
その「調べる」に至るまでの道筋
つまり「興味を持って頂く事」だと思っています
稚拙な僕の文章が
微力ながらでも
「 焼き物の ‘’興味” の入り口 」になってくれるのでしたら
これ程嬉しい事はないのです
2021年9月23日 飛騨照見窯・長倉けん
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