「 グレイの器 」シリーズ
その名の通り、ねずみ色の器です
二十年近く前になるでしょうか
その頃の僕は、実家の窯元で働きながら、
自分の作風を模索していました
今メインで作っている主力商品の源流は、その頃培われたもの
その殆どは、「粉引き(こひき)」という技法に基づいています
「 粉引き 」というのは簡単に言うと
“褐色の陶土に白い泥をかけて、白い風合いにする技法 ” の事
この技法を採用したのは、白い器をやりたかったというのが
最大の理由だったのですが
実はもうひとつ理由がありました
僕が主に扱っている陶土は、白い泥をかけないと、
焼き上がりが只のねずみ色になってしまうのです
独立する前の、まだ自分の作風が確立されていない頃の僕は
このねずみ色に対して、どこかありきたりというか
独立する為のツールとしては、やや力不足と判断
白い泥をコーティングする事で、はじめて勝負出来ると思ったんです
以来、ねずみ色の器を作る事はありませんでした
月日は流れ
僕も独立し、自分の窯を持ち
カラフルシリーズ等、幾つかの主力商品が生まれていったのですが
その殆どが 、” 白い泥をかける技法 ”
即ち 粉引きをベースにしたものばかりでした
そんなある時、焼き上がった器のひとつに、ふと目が止まりました
それは、何かの理由で白い泥がかかり切らなかったのでしょう
その僅かな隙間に見える本来の土の色
即ち、ねずみ色の部分に
思わず 「 あれ?! 」っとなったのです
凄く良い色に見えました
魅力的でした
かつて、なんの変哲もない、無個性な色としか思えなかった、
そのねずみ色の部分から
土本来の力強さを感じたのです
これは一寸衝撃でした
それで次の製作の時に、試しに白い泥をかけない、素のままの器を作ってみたのですが
これが驚くほど良かったのです!
何故、今までこの良さに気付かなかったのだろう??
と、、、
恐らくですが、「今」だからこそ
この ” 素のままの器の良さ ” がわかる、、、
いえ
” 生かせる ” のでしょうね
自分の作風を模索して、およそ二十年
独立して十年
この間、様々な事がありました
重ねた月日は、技術の向上だけでなく
僕自身を、内側から変えてくれたようです
その積み重ねが
なにも飾る事のない
素のままの器を
僕自身のものに
してくれたのでしょう
「 グレイの器 」シリーズ
その名の通り、なんの変哲もない、只のねずみ色の器です
でも、そのなんの変哲もないところが
このシリーズ最大の魅力なんだと
今は自信を持って
言えるのです
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